第3通:Dear God in a Filed

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光輝くんはとても活舌がよく背筋をピンと伸ばしあか抜けていた。少なくとも俺には中学生3年生より幼くは見えなかった。 光輝くんと既に仲良い雰囲気を醸し出しており「じゃー俺ぇ次ぃ!」と明るく手を上げたのは澄川晶(すみかわあきら)くんだった。 晶くんは14歳の中学2年生で俺の1つ年上だ。彼の髪の毛は一本一本が細いタイプの綺麗な栗色で、肌の色も女性のように白かった。 しかし、女性らしさを微塵も感じさせないようなヤンキー口調で光輝くんとは対照的に姿勢も悪かった。   後で知ったが晶くんはある有名な音楽家の息子で筋金入りのお坊ちゃまだった。 横浜へは彼の家のお抱え運転手が毎日送ってくれていたし、彼の中学は日本で一番有名な私立大学のエスカレーター式の付属だった。 彼は先祖代々受け継いだかのような求心力と、持ち前の兄貴分の性格で後輩からすごく人気があった。今回の集中トレーニングを通して、俺も彼の事を大好きな後輩の1人になった。 俺はこんなすごい先輩たちと2週間一緒にトレーニングを受けるのかと身が引き締まり自己紹介をどう言おうか脳内をフル回転させていた。 ふと、修くんはどんな気持ちなんだろうと思い横を見ると、彼の口はポカンと開いていた。 まだ面識が浅いうえ年上なのでツッコめないが「おい!圧倒されてんなよ!」と脳内でツッコんだ。 自己紹介の順番は光輝くん、晶くんと自然と時計回りな流れになったので、晶くんの隣にいた俺は、別に修くんを出し抜いているわけではないよと、全員に言い聞かせるように「じゃー時計回りで!」と前置きした後で、自分の名前を噛まないようにゆっくりと言い、年齢は13歳の中学1年生で、1番年下になるし入所したばかりなのだと謙虚な自己紹介をした。 光輝くんは大きな黒目を輝かせて、「え!13歳なの!大人っぽいね!」と言ってくれ、晶くんは「俺、この間、星也をテレビで見たよ!あんな短期間でここまで来れるなんて、パネェ!」と声を上げてくれた。 ああ、選抜メンバーってちゃんと性格も鑑みて決めているんだなぁ。と今まで東京のレッスンで過ごした1ヵ月、実は俺がどんなに同年代の子達とのコミュニケーションに飢えていたかがわかった。 
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