第3通:Dear God in a Filed

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俺の空手の経験は間違いなくダンスに生きていた。 ダンスは空手の演武に通じるものがあった。また、俺は1番年下で身長は光輝くんと同じくらいだったが、手足は俺のほうが少し長かったせいもあり、綺麗なフォームを描いているとダンスの先生が褒めてくれた。 修くんはダンスレッスンで失敗しても落ち込むような事はなかった。 「うわー。できねぇ!」とか「ごめん!また俺だー。」と床に頭をかかえて倒れこんだりと明るく振舞っていた。 俺なら絶対わかりやすく落ち込み周りに気を使わせてしまっただろうし、休憩時間も自主練してみんなと話せる機会を逃していただろう。 修くんはダンススキル以外は俺よりも何枚も上手だった。 トレーニング後、横浜の彼の自宅に一緒に戻り食事や風呂を済ませ、さあ寝るぞっていう前に修くんは毎晩「星也、今日のフリもう一回教えてもらっていい?」とお願いしてきた。 そしていつも、修くんの覚えが悪く眠気に襲われた俺がイラつく直前に、「あーできねぇ!星也、あんがと、おやすみ~。」とかっこ悪いところを全部被ってくれた。 修くんと長く時間を過ごす事で俺は人とうまく付き合っていくには何が大切かを学べたと思う。 そんなわけで、2週間は俺にとって本当に有意義な春休みになった。トレーナーからはアクロバットは4人とも「合格レベル」、また修くんと2人3脚で頑張った結果ダンスは先生に「2人とも光輝くんと晶くんに近けたね。」と労いのお言葉を頂けた。   2週間のトレーニング終了後、俺たち4人は横浜の有名な海軍バーガー屋さんで打ち上げをした。 晶くんが教えてくれたが、うちの事務所は通常ダンスレッスン以外の事にまで手を伸ばさないらしい。アクロバットは先輩レッスン生やもともと入所前から習っている子達がいるので、バク転やその他の技は周りに教えてもらいながら習得するのが普通との事だった。 「だからぁ~俺たち~もうすぐデビューしちゃうかもよ!ゴイスゥ~~!」と、おちゃらけて晶くんが大声を出したので、修くんと俺はゲラゲラ笑った。 そして光輝くんは笑い声は上げず白い歯を見せ爽やかに微笑んでいた。
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