第2通:アイドルの神様へ

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よく芸能界の仕事は0か100かという人がいる。それはあながち間違っていないと思う。 100の時に体と精神を保つ事ができる人じゃないと売れ続けれないし、保っていたとしても不祥事等を起こし、0の掛け算の法則のように人気や仕事が突然無くなる事だってあるからだ。 オーディションを受けた瞬間から俺のアイドルとしての仕事は0から100になった。 人生が一転した瞬間だったが当の本人は何が何だかわかっていなかった。 笑いの神様如く俺にはアイドルの神様が東京という地を踏んだ時点で舞い降りていたに違いない。 *********************************************************************************************************** 指定されたオーディション会場にはちょうど2時間前に着いた。 1時間毎に入れ替えで入所希望者のオーディションをやっているようで1時からの出番を終えた10代前半の少年達が会場を出て行く所だった。 皆、1人または2-3人で集まってきており保護者の姿は見えなかったので一人で行く事を勧めた母親に感謝した。ほら我が家のマリア様はいつも正しい。 改めて少年達を見ると俺に似たファー付きのレザージャケットを羽織っている子達が何人もいた。俺と同じ俳優に憧れているのかな?と思い少し近くで話を聞いてみたくなったが、俺は睡眠やここまでの移動で割かれた準備時間を取り戻す事を優先する事にした。 オーディション会場を離れると指定時間に戻れない危険性があると思い、オーディション会場と下の階を繋ぐ非常階段を見つけ、そこを俺の直前リハーサルの場所にする事にした。 先ずは体の冷えを解消しかつ緊張をほぐすため、俺は空手でよく準備体操がてらにする演武をやった。普段の動きをする事で心を落ち着けようと思ったが、この場所では「せいぃぃっ」の掛け声は思いっきり出せないので効果は俺の予想の半分くらいだった。 まあ空手は本番の特技で求められるのでこのくらいで良い事にしようと脳内でツブヤキ、今度は10分間空気椅子をする事にした。
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