それぞれの日常

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「昨日のドラマ見た?」 「見たよ~でも、主演の男が 演技も顔も微妙だった。」 「え~!?桜岡君だよ? 今人気急上昇中、ブレーク間違い無し、21歳の 超新星!それを微妙だなんて、蛍、 やっぱりアンタずれてるわ。」 他愛もない話をしている間に、 『東京スポーツ科学大学前行き』 と表示されたバスが停留所に停車した。 東京スポーツ科学大学とは、 オリンピック等、次世代を見据えた スポーツの科学的研究を主とする 大学である。 栄養学、健康管理学、身体ケア、 スポーツ生理学から スポーツ物理まで、 様々な分野の専門知識や技術を学ぶことが でき、卒業生の中には、 トップアスリートの専属コーチに なっている人もいる。 新橋駅から大学のキャンパスまでは 約20分ほど。 車内は同じ大学の学生やサラリーマンなどで 混雑していたが、先程の地下鉄に比べたら 天国のようだ。 そのサラリーマンたちも、大学の4つ前の 停留所で降車し、そのままバスは 大学前に到着した。 『有難ウゴザイマシタ。マタノゴ利用ヲ オ待チシテオリマス。』 バスの自動運転AIが、存在しない 運転手に代わって乗客ひとりひとりに 律儀に謝礼を述べる。 携帯をかざして料金の支払いを済ませ、 蛍は唯と分かれて1時限目の講義室へと 向かった。
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