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午前6時を過ぎた横須賀は
既に陽が昇り、周囲は明るかった。
雲のほとんどない青空と
海から吹き付ける爽やかな風。
中国による攻撃がなければ
実に清々しい朝だったに違いない。
結城はポケットから携帯を取り出し、
画面上に指を走らせた。
電話帳の『宮野蛍』を親指で
タッチする。
2~3回の呼び出し音の後、
『もしもし』という聞きなれた声がした。
「おはよう、蛍。
起きてたか?」
『はい……昨日試合だったので…
今起きました…。』
「そうか……。」
『結城さんから電話なんて
珍しいですね。何かありましたか?』
一瞬、口から飛び出しそうになった
言葉を飲み込んだ。
ダメだ――――
彼女に余計な心配をさせるわけにはいかない。
俺は真希を幸せにできなかった。
だから、今度こそは、蛍だけは―――
「なあ、蛍。お前、今、幸せか?」
『??はい、楽しいですよ?』
「・・・そうか。ならいいんだ。
お疲れのところ、悪かったな。」
まだ電話口で彼女が何かしゃべっていたが、
彼は構わず"通話終了"のボタンを押した。
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