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蛍はすぐさま携帯を取り出し、
『結城悠馬』を選択。
"発信"のボタンをタッチした。が―――
『おかけになった電話番号は
現在電波の届かない場所にあるか、
電源が入っていないため・・・』
何度かけ直しても同じ文言が
虚しく繰り返されるだけだった。
『あ、今、中継が繋がったようです。
海上自衛隊横須賀基地から中継です。
本田さ~ん?』
テレビの中継画面が報道スタジオから
横須賀基地に切り替わる。
結城との思い出の場所であるヴェルニー公園で
若い男性リポーターが緊迫した様子を
伝えていた。
『こちらは海上自衛隊横須賀基地です!
ちょうど今、海上警備行動の発令に
基づき、空母となったいずも以下
第一護衛艦隊群が小笠原諸島へ出動するところです!
あ、今いずもが動き始めました!
タグボートに引き出されていきます!』
テレビカメラがいずも甲板で登舷礼を
行ういずもの隊員たちに寄っていく。
蛍はテレビの画面を食い入るように
見つめた。
だがそこに彼女が探していた男の
顔はなかった。
「結城さん……」
テレビの横に飾られた写真の
中で、ふたりが笑っている。
蛍の入学祝いで訪れた沖縄の写真に
彼女は彼の無事を祈った。
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