ぼくと彼女のスクランブル

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ぼくと彼女のスクランブル

「まだ警戒態勢(アラート)解かれてないってのに、よく食えるね」 ぼくは呆れ顔になる。 「あはひはあんはほひはっへ、はいひょくようふはほ」 (訳:あたしはあんたと違って、体力勝負なの) ……食べるか喋るかどっちかにしてくれ。 ぼくの目の前でホットドッグにかじりついているのは、ぼくのリーダー……つまりは上司だ。と言っても同い年だから、任務外ではタメ口になる。 彼女とペアを組んで、もう1年近く。スーパーエースの肩書きの割に、素顔の彼女は屈託のない少女だった。正直、ぼくは彼女に惹かれていた。 「ほんと、ホットドッグ好きだよね。あ、そういや、駅前に新しくホットドッグの店ができたよね」 ぼくがそう言った時だった。 サイレンの音が響き渡る。 「!」 一瞬で飛行士(アビエータ―)の顔つきに戻った彼女は、鞄の中からヘッドセットを取り出して装着する。 「……Vector to target, two-seven-one, three-zero mile, angel two-niner」 送られてきたスクランブル・オーダーを復唱(リードバック)しているようだ。そして彼女は、ぼくを真顔で見据えて言う。 「You copy?」     
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