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糸目の男もまた緊張していた。罠かも知れない。この長髪の男が敵ではないという確証は無いのだ。
この男は囮で、テントの中で待ち伏せされていて引き込まれるかもしれない。もしくは砂の下に軍隊が隠れている可能性だってある。疑えばキリがない。
「後ろを」
指示を出す糸目の男の背中に、二人の兵士が張り付くように続く。
「失礼」
簡易式テントの入り口に垂れ下がる布を慎重に手でよけて見ると、甘い匂いが香る。花のような香りだ。
(この香りは…)
屈んで中を伺うと、花の芳香に相応しい可憐な人物が横たわっていた。
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