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病人はひどく汗をかいていて、若葉色の髪が、朱の差す頬や額に張り付いている様が妙に美しかった。
ぐったりしているが時折痙攣を起こすように全身が硬直し顔を歪める。かなりの高熱だ。呼吸も安定していない。まさしくひどい状態であるようだ。
(確かに……このままではもう長くはなさそうだ。――だが、これは何と言ったか)
最初に感じた甘い花のような香りには覚えがあった。
糸目の男は手袋を外し、指先で横たわる人物の額に浮かぶ玉の汗を拭うと、確かめるように口に含んだ。
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