11人が本棚に入れています
本棚に追加
糸目の男はテントから出るなり、ローズに向き合う。
「確かに大分消耗していますね。しかし、この症状には心当たりがあります」
まさか。知っているのか? 想定外だ。だが、もしそうだとしてもまだ可能性がある。ローズは平静を装った。
「治りそうか? 早く医者に連れ行ってくれないか」
「それは出来ません。ですが、充分な水と食料ときちんとしたテントを差し上げますので」
「ここへこのまま置いて行くって言うのか? 砂漠にこんな状態で? 中の奴を見たんだろ?」
「お気の毒ではありますが、我々の国の決まりでして。外国の方の入国は認められないのです」
「そんなこと言っていられないだろう! 命が関わってるんだ!」
「その事ですが、命に別状はないと思います」
だめだ。こいつはこの毒を知っている。
最初のコメントを投稿しよう!