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第2話 お見合い、ガリ、初夢
「後は若い方だけで」
うわ、本当にそう事言うんだ。楓は叔母の型通りの口上に驚き、視線を向けた。
しっかりしなさいと唇の動きだけで伝えてきた叔母はそのまま三つ指ついて出て行った。
どうしろと。楓は後悔した。一体何に対してなのかは不明。強引に(お見合い話)を勧める叔母に断りきれなかったことか。3日前にもらった釣書を全く読んで来ていないことか。それとも、20年近く帰っていなかった故郷にふらりと立ち寄ったことか。
楓の正面に座っている男性は好みではなかった。服を着ていてもわかる筋肉質な体も、言葉を選べば朴訥と言える顔も。
楓とて結婚や家庭に憧れる年齢ではあるが、それは好きな相手とするものという線は譲れない。今回は、「私には勿体ない方」ということで、楓は全く乗り気ではなかった。
それにしても無言のまま知らない人と向かい合っているのも気まずい。いっそのこと、手を付けていないお寿司のガリでも囓り散らかそうか。
「どんな夢がありますか」
奇行に走る前に無難な質問をしておく。本当なら男の方からリードしてもらいたい。ガタイの割に縮こまっている男性を前に楓は逆に落ちついた。
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