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「それをずっと待ち続けているのですね」
楓は分かりきった問いを口にした。
もちろんと言わんばかりに男性は力強く頷いた。
こんなに真剣に待たれるなんて、羨まし過ぎる。私を待ち焦がれてくれる人なんて居ない。
「その幼馴染の方、どちらに居るんでしょうね」
「目の前にいます」
「え?」
男性が頷くのを見て、古い記憶が蘇ってきた。
「ケンジ?」
「あー、やっぱり気づいてなかった。なんかおかしいと思ってたんだ」
「だって昔のケンジは(ガリ)ガリで、女の子みたいに華奢だったのに」
「そりゃ、好きな幼馴染に似合う男になるために鍛えまくったよ」
「え、す、好きって」
「ずっとずっと楓を探していたよ。さて、次もまた会っていただけますか。もちろん、結婚を前提にですが」
飲酒したのか、それとも秋になったのか。楓は真っ赤になって答えるのがやっとだった。
「ま、前向きに検討させていただきます」
ケンジは微笑んで答えた。
「ええ、いつまでも、お待ちしてます。出来れば早い方が嬉しいですが」
叔母さん、仕組んだな。楓は照れ隠しにそう一人つぶやいた。
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