第4話 四月、だし、凛

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「私はかつお節か!」 柏木梓がツッコミを入れてきたが俺はあまり悪くないと思う。 部活や勉強したりする人間が多い高校で、放課後のチャイムと同時に玄関にいるのは少数派だ。その中でも、常に俺より早く帰っている梓が一体何をしているのか不思議だった。 まだ肌寒さの残る(四月)のある日、梓と玄関で会ったので何の気なしに聞いてみた。 「お前、いつも急いで帰るけど何しているん?」 「私?(ダシ)作っているよ」 「へー、料理してんだ。得意な料理は?」 そう聞いた俺に冒頭のツッコミである。やはりどう考えても俺は悪くない。 「料理の出汁じゃなくて、だし。山に車と書いて山車。天神様のお祭りのやつ」 あれを作っている人を初めて見た。昔からある物で、ともすれば山や森のように当たり前に存在している物のように思っいた。少し考えれば人が作った物だから人が保管、修復しているのは当たり前か。 「アンタこそ普段何してんのよ。暇してんの?」 「失礼だな、漫画読んだり、動画を観たり忙しいんだよ」 「それを暇って言うんだよ。付いて来なよ。山車作る所見せてあげるから」 祭りで山車を見たことはあるが、作っている最中は珍しい。もしかしたら面白い動画が撮れるかもしれない。そんなつもりでついていくことにした。
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