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「じゃ、このチャイムで先生は私に教師免許を第一号で見せる約束をしたってことでいですね」 「なんだそれ。チャペルでの誓いじゃないんだから」 「いつかチャペルで誓ってくれてもいいんですよ?」 「は?」 「もう先生じゃなくなったっていうなら、私とそういう関係になっても問題はないですよね?」  悪戯っぽく笑う篠宮に坂本は頭痛がしてきた。 「そういう冗談はいいから、ほら、帰ろう」  坂本は教壇を降り、扉へと歩き出す。振り返りはしなかったが、篠宮が後ろを付いてくる足音が聞こえた。坂本は扉を開けてから篠宮へ振り返る。篠宮は坂本のすぐ後ろに立っていた。 「私が今の坂本先生が送り出す最後の生徒ですね」  その言葉に坂本は頷いた。そして「さ、行くぞ」と篠宮を促した。 「未来の先生に送り出して貰える生徒たちが、今から羨ましくて仕方ないですね」 「まだ先のことだな」  坂本は冷たい空気の漂う廊下を歩きだした。すぐ後ろを篠宮も歩く。  誰もいない廊下に、二人の足音だけが響いた。 「東京で住む場所決めたら、また連絡しますね」  背後から聞こえた声に、坂本は何というべきか少し迷い、それから篠宮のほうへと振り返った。  篠宮は薄く笑みを浮かべていた。坂本もまた微笑みを返した。  時の止まったように静かな廊下で、二人もまた立ち止まった。
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