立春の夜に

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佐々木はあせっていた。あと2時間で締切だというのに原稿がまったくできていない。 こんな時はどうすればいいのだろう。もういっそのこと死ぬほうがいいのだろうか。 そんなことが佐々木のちっぽけな頭をよぎる。 「ああ、俺は偉大な芸術家になる男なんだ。そんな俺が人生という名の締切に追われて結局何も残せずに死んでしまうとしたらなんて悲しいことだろう。そんなことはダメだ。何としてもそんな展開は避けなければならない」 佐々木はボロボロのアパートの一室で虚しく、そんな独り言をつぶやく。
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