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時は2017年の冬。
その部屋は、何処とも知れない場所。
中は明るさ1つ無く、アレが1つ入れられていた。
アレはその場所で座らされているのだ。
何故、暗いのに座っているとわかったのかは、単純に腰を下ろしている感覚が、アレにはあったからだ。
他にもアレは多くの事を理解していた。
自身が置かれた状況。
此処が何処であるのかという事。
この部屋が縦、12m。横、8mの個室である事。
側面にマジックミラーが貼られており、中を水槽を眺めるかの如く、覗かれている事。
見ているのは2人。中年の男と、少女。
アレは部屋の状況を確認すると、ニヤリと笑い、光が齎されるのをただ、待っていた。
「今から貴方に、3つの質問をします。
答えられれば、欲しい物を」
嗄れた男の声にアレはすぐさま返答を返す。
「電子物質によって発生する光源」
若干の狂気染みた笑い声を添えた注文が、アレより渡され、ガラスの向こうの観客も、マイク越しに話す男に、承諾の頷きを見せる。
「よろしい。では、一つ目の質問。
貴方は存在か、それとも現象か」
室内を共鳴するマイク音声は、暗黒に潜むアレの耳に入り、ケタケタと物音を立てながら、微笑んでいたのだろうか。何処かしら不気味の建前が似つかわしい声で、アレは質問に答えたのだ。
「私は存在よ。認識可能な現象では無い。
確定的な証明を持たない、事実上の生物」
暗がりからの返答に、ガラスの向こうで頷く少女。
その合図と共に、額縁眼鏡を光らせる男は、再度マイクに口を近付け、新たな問題を定義する。
「わかりました。では、2つ目の質問です。
貴方はそこに居るのですか。
それとも居ないのですか」
すかさずアレは答える。
「存在といっても、認可は私には出来ない。
どれだけ単体が主張しようと、集団という単体が認識出来なければ、否定を起こす事すら出来ない。
だから貴方達が決めて......私は居る。それとも居ない」
マイク越しに話していた男は、少女の方に目を向ける
少女はコクリと頷き、遂に頑なに閉じたその口を開く。
「72点、基準値通りです。
3つ目の質問をお願いします。
ただし、慎重に。
失敗すれば......私と貴方は助かりません」
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