明暗の疑

2/5
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 時は2017年の冬。  その部屋は、何処とも知れない場所。  中は明るさ1つ無く、アレが1つ入れられていた。  アレはその場所で座らされているのだ。  何故、暗いのに座っているとわかったのかは、単純に腰を下ろしている感覚が、アレにはあったからだ。  他にもアレは多くの事を理解していた。  自身が置かれた状況。  此処が何処であるのかという事。  この部屋が縦、12m。横、8mの個室である事。  側面にマジックミラーが貼られており、中を水槽を眺めるかの如く、覗かれている事。  見ているのは2人。中年の男と、少女。  アレは部屋の状況を確認すると、ニヤリと笑い、光が齎されるのをただ、待っていた。 「今から貴方に、3つの質問をします。  答えられれば、欲しい物を」  嗄れた男の声にアレはすぐさま返答を返す。 「電子物質によって発生する光源」  若干の狂気染みた笑い声を添えた注文が、アレより渡され、ガラスの向こうの観客も、マイク越しに話す男に、承諾の頷きを見せる。 「よろしい。では、一つ目の質問。  貴方は存在か、それとも現象か」  室内を共鳴するマイク音声は、暗黒に潜むアレの耳に入り、ケタケタと物音を立てながら、微笑んでいたのだろうか。何処かしら不気味の建前が似つかわしい声で、アレは質問に答えたのだ。 「私は存在よ。認識可能な現象では無い。  確定的な証明を持たない、事実上の生物」  暗がりからの返答に、ガラスの向こうで頷く少女。  その合図と共に、額縁眼鏡を光らせる男は、再度マイクに口を近付け、新たな問題を定義する。 「わかりました。では、2つ目の質問です。  貴方はそこに居るのですか。  それとも居ないのですか」  すかさずアレは答える。 「存在といっても、認可は私には出来ない。  どれだけ単体が主張しようと、集団という単体が認識出来なければ、否定を起こす事すら出来ない。  だから貴方達が決めて......私は居る。それとも居ない」  マイク越しに話していた男は、少女の方に目を向ける  少女はコクリと頷き、遂に頑なに閉じたその口を開く。 「72点、基準値通りです。  3つ目の質問をお願いします。  ただし、慎重に。  失敗すれば......私と貴方は助かりません」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!