第十四幕 雑賀孫一

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「じつはそのまさかさなんですよ。いろいろ立て込んだ事情がありましてね。今回、おいらは皆さん雑賀と手を組み(・・・・・)に来たんです」 「なにっ!?」  そのさらっとしてくれた爆弾発言に、雑賀の三人は思わず声を上げ、短筒を握る手の力も緩めてしまう。  因果応報に反するよっぽど確かな理由でもない限り、呪士はけしてどちらか一方の側に肩入れするようなことはしない……。  対して今回の戦は織田とそれに敵対する本願寺という構図の中で発生した、いわば、ただの〝勢力争い〟である。それゆえに呪士が自分達の味方をしてくれるなどとは思ってもみないことだったのだ。 「どうにも信じられん! 真の呪士がそのようなことするものか!」 「貴様、やはり織田の間者か!?」  普通なら到底あり得ないようなその話に、大男と青年はそう言って、再び銃口を雷童丸に突きつける。 「だから、ちょっと待ってって! 今、その理由をちゃんと説明しますから! ともかく先ずはその物騒な物をしまってくださいよ。危なくておちおち話もしてられない……」  雷童丸は両手を前に突き出し、今にも本当にぶっ放しかねない彼らを再び制すると、これまでの経緯を掻い摘んで手短に話して聞かせた――。 「――なるほどの。そういう理由にござったか……しかし、呪士が掟を破って非道を働くとは、まったくもって世も末じゃのう……ああ、こりゃ失礼」  事情を聞き、思わずそんな言葉を口にした白髭の老人は、雷童丸もその呪士であることを思い出して口を噤む。 「いや、ほんとその通りです。呪士の中からこんな外道の者を出してしまうなんて……だから、この始末は呪士であるおいらが着けなくちゃいけないんだ。そして、こんな事態を招いてしまったおいら自身の落とし前も……」  しかし、雷童丸は老人の言葉に気を悪くするでもなく、むしろ賛同するかのように悲痛な表情を浮かべてそう答えた。
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