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「……ま、理由はどうあれ、ほんとに呪士が味方してくれるっつうんなら、俺達雑賀としてはなんの文句もねえぜ。んなことよりも問題なのは、そのクシナダの姫とかいうやつの話だ。つまりはその玉依の民の巫女だかなんだかいうのに大きな嵐を起こさせて、俺達の鉄砲を使えなくするってえのが、織田の魂胆だっつうことだな?」
再び後悔と自責の念に捉われる雷童丸の心情を吹き飛ばすかのように、髭面の大男がいい意味で気遣いなく口を開く。
「……ん、ええ。でもそれだけじゃなく、川底にいろいろ仕掛けてある雑賀川の水嵩を増し、川を船で渡れるようにするのも狙いの一つでしょうね。あと、強風で弓の的も定まり難くなる。そうなったところを全軍で一気に突撃……ってのが、おそらくやつらの作戦です」
その声に雷童丸は気を取り直すと、大男の推論を補足した。
「そうか。となると、兵の数で劣る我らに勝ち目はありませんね。その、クシナダの姫というのを是が非にでもなんとかしなくては……」
今度は青年が呟き、困惑した顔で腕を組む。
「それで今夜はそのことを相談したくって、こうして城に忍び込ませてもらったってわけなんですけど……ああ! そういえば訊くの忘れてた! えっと、雑賀孫一さんってのはどなたなんですか?」
青年の言葉を受け、ようやく本題に入ろうとする雷童丸だったが、そこで今さらながらに話すべき相手をまだ確認していなかったことに気づき、三人の顔を交互に見回す。
雑賀孫一――またの名を鈴木孫一と呼ばれるその人物は、代々その名を名乗っている雑賀衆の頭領である。
「やっぱ年からすると、お爺さん。あなたですか?」
「んん? ……いや、確かにわしは先代の孫一ではあるが、今は倅に家督を譲った隠居の身じゃ。わしは鈴木重意。近頃は佐大夫と呼ばれておるの……で、どの〝まごいち〟のことを言っておられるのかの?」
だが、雷童丸の推測を穏やかな声で否定すると、白髭の老人はなんだか妙なことを言い出す。
「どの?」
「ああ。〝まごいち〟と言ってもいろいろおるからのう……なあ?」
「はい……拙者は重意が二男・鈴木重秀。またの名は鈴木孫一にござりまする」
老人に声をかけられた大男は、急に畏まって自らの名を名乗る。
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