第十四幕 雑賀孫一

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「おう。鳴神の呪士殿だったな。こうなりゃ、俺達が生き残るにはあんたにかけるしかねえ。んで、俺達は何をすればいい? なんでも協力するぜ?」  筋骨逞しい髭面の大男――鈴木重秀は、その協力要請に大きく頷き、手にした自慢の鉄砲を見せつけながら雷童丸に尋ねる。 「うむ。死ぬも生きるも呪士殿次第じゃな」 「はい。それがしもこの命、鳴神殿に預けまする」  続けて佐大夫も、そして精悍な顔をした青年――鈴木重朝も、重秀と同じように力強く頷いてみせた。 「ありがとうございます。まあ、やってもらいことと言っても、そんな大したことじゃありません。散発的に攻撃しかけるとかして、とにかく織田軍の目をこちらに惹き付けておいてほしいんです。その間においらが敵陣に紛れ込んで、クシナダの姫の方はなんとかしますから」 「なんだ? それだけでいいのか? そんならこれまでとあんまし変わらねえ。朝飯前どころか昨夜の夕飯前の話だぜ」  雷童丸のいたって普通な注文に、重秀は少々拍子抜けしたというような顔でそう答える。 「ただ、これは織田がクシナダの姫の力を使う前の話です。暗い夜の内に、あの人ゴミの中からクシナダの姫の居場所を探し出すのは非常に困難。探すとすれば明朝、明るくなってからになります。まあ、向こうもなんだかんだで用意があるでしょうし、まだ時はありそうですが、もし、こちらが行動を起こす前にクシナダの姫の力が使われ、スサノオ――即ち暴風雨を呼び寄せられてしまったら……そうなると、かなり事情が変わってきます」  だが、そんな重秀の期待に応えるかのように、雷童丸は但し書きを付け加える。 「そうですね。確かに鉄砲も弓も使えなくなるし、織田軍に雑賀川を渡られることにもなる……そうなっては近接戦を得意とせぬ我らにあの大軍を食い止めておく(すべ)はございませぬ」  重朝が暴風雨が発生した時のことを想像し、すでに負け戦を覚悟したかのような口調で呟く。 「ええ。なので、今の暴風雨が起こる前の作戦を仮に『甲』として、万が一、相手に先を越されてしまった場合に備え、作戦『乙』というのも考えてみたんですが……」 「作戦『乙』?」  〝まごいち〟三人は、同時にそう呟いて、怪訝な顔で小首を傾げる。
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