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…………しかし。
「…!」
次の瞬間、珠は白目を剥いて天を見上げ、開いた口から声にならない声を空へと発する。
ゴオゥゥゥ…。
すると、周囲の河川敷には俄かに風が吹き始め、辺りは急激に暗くなってゆく……ふと頭上を見上げれば、先程までの澄み切った朝の空が嘘のように、黒々とした分厚い雨雲がものすごい勢いで集まり始めていた。
「おお! ついに始まったか!」
それを見て、ようやく間見は石笛を口から放し、歓喜の声を上げて天を仰ぐ。
……ポト……ポト……。
その間見の顔に、今度はぽつりぽつりと雨粒が当たり始める……それは一滴、二滴と次第に数を増し、乾いた大地に黒い斑点を描いていく……。
さらにその斑点はとなり合うもの同士繋がって大きな一つの染みとなり、散発的だった雨粒はいつしかザアザアと降りしきる本格的な雨降りへと変化していた。
「ハーッハッハッハッ! よくぞ参った、須佐之男命よ! さあ、もっと雨を降らせ! 思う存分、暴れるがよいぞ! ハハッ…ハーッハッハッハッハッ!」
激しく降り注ぐ雨にその身を打たれながら、間見は狂ったように曇天へと高笑いを響かせ続けた――。
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