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「――それえーい! 進めえっ!」
雑賀軍が迎撃の準備をしているその間にも、織田の船団は川岸に設けられた柵に取りつかんと激流の中を近付いて来ている。
「弓隊、放てぇーい!」
…ピシュン……ピシュン……ピィシュ…ピシュン……。
いち早く配置についた雑賀の弓隊が、織田の船団目がけて第一射を放った。
……カッ! …カッ! …カッ…!
だが、織田の舟の周りには厚い木の楯を立てて城壁のように巡らしてあり、鉄砲の弾ならばいざ知らず、矢ではなかなかその楯を射抜くことができない。
加えてだんだん激しさを増し始めた風のためにその狙いも定まらず、第一射に続いて二射、三射といくら矢を射かけてみても、織田の進軍を止めるまでには至らなかった。
「鉄砲隊、放ぇーい!」
…パーン! ……パン! …パーン…!
止まらぬ織田の船団を前に、辛うじて鉄砲の使える条件下にいる者達も号令に合わせて鉄の弾を撃ちかけ始める。
……ドシュ! …ドシュ…!
「うぐっ!」
「ぐあっ!」
さすがに今度は木製の楯を貫通し、撃たれた幾人かの織田兵はもんどり打って川の流れに転げ落ちてゆく……しかし、今日の戦闘はいつもと違い、比べものにならないくらい使用している鉄砲の数が少ないのだ。これでは討ち取れる織田兵の数などたかが知れている。
それでも雑賀の鉄砲隊は慣れた手つきで一発づつしか撃つことのできない火縄銃に素早く火薬と弾丸を込め、迫り来る敵に間断なく弾丸を浴びせ続ける……が、弓隊同様、こちらも数で勝る織田の大軍を足止めすることは一向にできなかった。
そして……。
とうとう織田軍の舟は川岸の柵まで辿り着き、ある者は舟から飛び移ってそれをよじ登ろうとし、またある者は刃物を手に木材を繋いでいる縄を切って柵の破壊を試み始める。
「これを越えればもう城は目の前ぞ! 皆の者! このまま一気に雑賀の城を攻め落とすのじゃ!」
堀秀政の叱咤に尻を叩かれ、柵に取り付く兵達がついにそれを乗り越えようとしたその瞬間。
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