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多々良が教室を出て十数分後、姫野は友人の真野と共に自身の教室へと足を踏み入れた。そして姫野の机を見て思わず真野は叫ぶ。
「ひめちゃんアレ、机の上に置きっぱなしだったの!?」
「えーだって見た目はただのお菓子だし、わざわざヒモほどくような人も居ないだろうしいっかなーって。」
そう言った姫野は箱を持ち上げ抱きしめる。その表情は恍惚としており、もっと言うならば抱きしめたその手で箱を撫で繰り回していた。
それを真野は呆れたように眺め、やれやれとでも言うように息をつく。
「私が描いたの、そんなに喜んで貰えて何よりだけどその顔はヤバイわ。女子として終わってる。」
それでも気にしない姫野は表情を変えず捲し立てた。
「ホントにありがとう真野ちゃん!あのゲーム、みーんな多々良攻めの同人ばっかだから!真野ちゃんが多々良受けもいけてまさか描いてくれるなんて!!家宝にするわコレ。」
「それは何より、ちょっと照れるけど。っていうか多々良といえば、このクラスにも多々良っていなかったっけ?」
真野の問いかけに、姫野はぽーっと宙を見つめ数秒考え、そうしてやっと思い出した。
「いるよ、多々良君。どんな人か知らないけど。」
ケロッと告げられたその発言に真野はついに半目となった。
「………いい加減リアルの男にも興味持とうよ。」
それでも箱をカバンに詰めながら姫野は言うのだ。
「残念ながら私は二次元の、しかも男の子達の恋愛にしか興味が無いのよ。私の気持ちは紙か画面の向こうにしかないわ。」
さ、帰ろう?
いそいそと準備を整えた姫野に促され、真野も足を進める。
「まぁ私もひめちゃんの事言えないけどね。」
「でしょう?私達の愛は万人に理解されずともいいのよ、私達が良ければ。」
「はいはい。」
そうして彼女らのバレンタインデーは幕を閉じた。
「あぁ!真野ちゃん、今年は最高のバレンタインだったわ!」
………知らず知らずに1人の青年の夢を壊して。
*蛇足説明*
右=男同士のカップルにおける女役側の事。受けとも言う。
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