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夢は見るもの壊れるもの
昼休み、俺、多々良が食堂から戻ると、教室は甘い匂いに包まれていた。
今日はバレンタインデー、女子と女子がチョコを交換し合う日である。
高校2年である俺は夢なんか見ない。本命チョコなんていう存在は一部の彼女持ちか、カースト最上位のイケメンか、部活に輝くスポーツ男子ぐらいにしか可能性すら与えられない幻のブツなのだ。
よって俺の元には、クラス全員分のチョコ用意してきたんです系女子から頂いたチロルチョコ1粒。それだけが本日の成果物である。
だんだんと中学で色恋にソワソワし始め、あの頃は自分もいつか女子から告白とともにチョコを貰えるかもとか、靴箱にチョコ入ってるかもとか、机の中にとか靴箱にそっととか色々期待していた。
だがしかし、さとり世代の俺は早々に悟った。このイベントは一部の特権階級のみが楽しむものであるのだと。
どちらかと言えば文系で、部活もしておらず女子ともほとんど話すことの無い俺には関係の無いイベントなのだ。
いいんだよ、俺みたいなやつが大多数なんだ。悔しくなんか全くないね。窓際一番前の席でチョコ食ってるあのカップル、爆発しちまえなんて思ってないさ、ああ全然。
そしてこのバレンタインデー、チョコフィーバーのピークは3度ある。朝の1時間目が始まるまで、クラス関係なく女子が渡り歩く昼休み、そして放課後である。
………チャイムが響く、それは2度目のフィーバータイムが俺になんの恩恵ももたらす事無く終わったことを告げていた。
ああ、別に残念だなんて思ってないさ。最後のフィーバーが残ってるなんてそんなこと………別に気にしていない。
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