レター・コンパス・ランドスケープ

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レター・コンパス・ランドスケープ

 人から人へ、場所から場所へ。  あっちへ行ったりこっちへ行ったり。 「姉ちゃん、飛空艇の準備できたよ」 「おっ、流石はやいねー」 「……何食べてんの、それ」 「さっきの荷物の届け先がパン屋さんでさー、お礼にもらっちゃった!」 「艇の中で食べればいいのに」 「せっかくなら出来立て食べたいでしょ」 「寒い中指真っ赤にしてまで?」 「もぐほへ。まごもごもっもっもっ」 「先戻ってるよ」 「まっへまっへ!」 「何?」 「ふはりぷんもらっははら!」 「……寒いよ」 「もらっははら!」 「わかったわかった」 「もごもご。次の届け先はどこだっけ?」 「もぐもぐ。国境近くの山村。おじいさんに薬を届けてくれってさ」 「ごくり。じゃあまだしばらくは雪景色か」 「ごくん。それから国境先の山越えになると思う」 「うえー、長旅になりそうだねぇ」 「その後は西に進路をとって、海を渡って島国へ」 「たくさん手紙が来てる国だっけ」 「うん。その辺で次の補給かな」 「島国かー。向こうはどんな所かな」 「あっちはもう春が来てるってさ」 「そうかそうか、むふふ!」 「嬉しそうだね」 「春は美味しいものがたくさん採れるからね!」 「食い意地」 「いいでしょ。それに、人にも笑顔が多いような気がするし」 「僕は寒くなければなんでもいいや。冬は動力の回りが悪いよ」 「情緒がないなー」 「じゃ、そろそろ行こっか」 「おー」  包み紙をクシャリと丸め、二人は街を後にする。  国境から国境へ。大陸から大陸へ。  海を渡り山を越え、異国へ行ったり異郷へ行ったり。  点と点を繋ぐため。人と人を結ぶため。  この世界のどこかで今日も、空飛ぶ姉弟は荷を運ぶ。
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