僕らの図画工作

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アナウンサーの明るい声がテレビから響いてきて、僕は、拍子抜けしてしまう。 ……確かこの番組は、目利きの鑑定士たちが日本の各地方を巡り、その土地の住人が所蔵する「お宝」を鑑定する──というもの。ごくたまに、とてつもなく価値のある本当の「お宝」が発掘されることだってあるのだ。 ≪「本日は此処、貴景町の公民館より生中継を行なっております! こちらが、今回出演いただく皆様です!」 ≫ 画面の中で、ワーッと賑やかな歓声が上がった。 「うわぁ、僕らの地元やん。懐かしいわぁ。」 『──ンな呑気なこと、言っとる場合か!』 《「先ずはこちらのお方!……ええと、シロさん? ですか。」 「"ジョウ"です。」》 そう言って、身なりのしっかりとした、いかにも「老紳士」風の老人が画面の手前に躍り出た。 『あれな、ウチのじいちゃんやねん。』 「そうなん? 凄いやん。」 僕は、事態を把握しきれぬまま、的を得ない返事を返す。 《「──失礼! 城さん。それでは、今回お見せ頂けるお宝というのは?」 「はい。これですわ。これが我が家の家宝。全部、かの有名画家、桂幽玄の掛け軸です。」》 そして、老紳士は誇らしげに古そうな三点の掛け軸を広げた。     
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