綺麗

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 たるんだ尻をむき出しにした女は、オロオロしながら自分の衣類を一枚ずつ拾う。私の男は口をパクパクさせて私の顔を見ている。フタが開いている、1本3000円した私の化粧水のボトル。セックスの事後の  バタンと本を閉じた。くだらねえ。何がくだらないのか?分からない。でもとにかく吐き気がする。叩きつけるように本を元の場所に戻す。こんな本が平積みにされている旧帝大の大学生協購買店。ファッション活字スキーホイホイ。有名アーティストが書いたといえばバカスカ売れてく無駄に大きな活字の無駄に改行の多いペラッペラな、お、は、な、し。世も末、世も末。じゃあ何を読んでれば旧帝大生っぽい?ノンフィクションルポか。近代文豪の小説か。専攻分野の専門書か。  いや、そういうことじゃない、わたしが言いたいのは。ただれたものを美味しく甘いものだと思う青年どもと、それを食い物にする奴らが嫌い。そう、そう。大学生が嫌い。大きな声で言えない話をいくつ隠し持ってるか、それが彼らの財産みたいなもの。気持ちいいんでしょう、それを肴に日々日夜ため息を吐き出すのが。可愛い人や綺麗な人を見て「素敵!」っていう言葉に真心を感じられないのは、そういうところから来てるのかしらね。彼らをピンク色のチューリップのお花畑とかに放り込んだら即死してしまうんじゃないの。  コートのポケットに両手を突っ込み、小さい舌打ちを繰り返しながら購買店を出た。
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