尽きる日は共にシェルターで

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「最期に観るのがコレなんて最悪だぁ」  監督ダレだよ、と文句言いながらパッケージを確認する。  主演の男の下の名前が居毒木と一緒だった。一字ずつ噛みしめるように名前を呼べば、体を大きく身震いさせて。 「こんなことできるなんて、現実じゃお前みたいな金持ちくらいかなぁ」  フィクションと現実の区別がつかない人のお手本のような、愚かな感想が口から漏れてしまう。 「地球滅びるなんてウソついて、好きな人を監禁してさ……」  パチリ、と居毒木と目があった。  昏い瞳が揺れている。  おやという違和感を覚えた。 「お前、この映画1回観てるんだっけ?」  そう口にしたのがダメだった。  思い至る節があったから。妙に献身的な男だった。俺たちは同じサークルに入って、たいがい一緒に行動していた。こいつぜってー俺のこと好きだろって、他のメンバーに自惚れたこともあった。その時も居毒木は優しく笑っていた。  シェルターで暮らしはじめてから、同じ寝床で眠る時もあった。隣の音がうるさくて眠れないからと、夜通しふたりで語りあった。  俺にとっては、楽しい13カ月だったのだ。居毒木にとっては、どうだったんだろう。 「……自意識過剰だと、笑ってくれていいんだぜ?」  俺の言葉に、居毒木は、都合の悪いことが発覚したかのように、大きく目を見開いた。 「笑ってくれねぇのか」  俺の顔がひきつる。 「……どうせもうすべてが終わるのに?」  居毒木が俺の手を取った。ひんやりと冷たい。  外では「決してシェルターから出ないようにお願いします」なんて録音アナウンスが、いよいよ最大音量に近づきはじめた。 「だったらさ、これ観るの、止めてくれても良かったのにな!?」  俺は生まれてはじめて居毒木に怒った。 「本当に、すべてが終わるんならよ!?」  遅れて出会った幼馴染のようになった俺たちは、互いに腹をたてることがこれまでに無かったから、これには自分でも驚いた。  カッと熱くなる身体、その衝動に身を任せて、俺はシェルターの外に飛び出した。 「宮くん!」  声が後ろから追いかけてくる。気にせず俺は人の気配が失せた街を走った。
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