濡れネズミ

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突然のゲリラ豪雨。 突然のイケメン社長との出会い。 そして、突然のキス。 どれもがリアルでは無かった。 「夢? どっきり?」 車内に隠しカメラを探した。シートや天井へ手をやる。 「何をしている?」 「いやあ、何がなんだか…これは夢ですか?ドッキリですか?」 「ドッキリ?」 「違うなら、なんで初対面の私にキスを?」 言いながら、香織は自分の身に起きた非常事態に今更驚きと怒りを感じはじめていた。 あー馬鹿だった。 やはり、テレビや雑誌で見たからと言っても他人の車にやすやすと乗るべきではなかった。 今更、目が覚めた思いだった。 ーーー私、キスした。見ず知らずの男と。 いや、顔も名前も素性も知っていたが話したこともない男と。 少し考える風に顎に手をやってイケメン社長の 樫口は、やがて口を開いた。 「お前は、犬を拾った事が無いか?」 「犬……?」 「ああ、俺は小学生の頃、雑種の犬を拾った。 雨がたくさん降っていてダンボールに入ったそいつは、なんていうか切ない瞳をして俺を見つめ返していたんだ」 翔は、懐かしい思い出を語るように目を細める。
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