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実際見る翔の方が数段、いや、はるかに素敵だった。
だがそれは見た目の話で、中身が大問題だ。
ーーー中身がいっちゃってる。
これは、もはや変人の域だ。危ない人でしょ、絶対に。
もこもこのバスタオルにくるまりながら香織は、がたがたと震えた。
「香織、大丈夫か?寒いか?」
凄く優しい声で香織に声をかけてくる翔。言いながら、香織をやわらかく抱きしめてタオルの上から香織の体を擦った。
「もう少し、我慢しろ。家についたらシャワーを浴びさせてやるからな。着替えも用意させるし。腹は、空いてるのか?」
「ちょっと、待った!シャワーを浴びさせるとか着替えを用意させるって何?」
腕の中でもがく香織を、翔は怪訝な表情で見つめる。
「シャワーを浴びたら当然、着替えるだろ?谷川に用意させる。お前は何も心配するな」
そう言ってギュウーっと香織を抱きしめる。
「心配だわ。ちょっ、ちょっと待った!ちょっと、降ろしてよ。どこに私を連れてく気!」
「キャンキャン吠えるな。ほら、もう見えてきた」
翔が指さす方向へ顔を向ける。
雨がやみ、すっかり視界の良くなったフロントガラス。そこから見える景色に香織は目をこらした。
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