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「な……」
声が出なかった。
目の前に見えてきたのは、まさに高くそびえ立つような大きな鉄の門だった。
自動で開いた門の中へすんなり入っていく車。
緑が溢れる庭園の中央に続く白い道。左右には色とりどりの名前のわからない花が花屋のように並んで咲いていた。
まるでダイヤのような雨の雫が花びらや葉の上にのり、きらきらと輝いている。
ーーー外国のおとぎ話に出てくるお庭みたいなんだけど!
窓に張り付いて香織は、流れていく風景を目を見開いて見ていた。
呆気にとられている内に車が停まった。
「ほおーーー」
感嘆の声を上げずにはいられなかった。
後部座席のドアを谷川が開けてくれる。降り立って、まず香織が見上げたのは、美術館のような英国調の建物だった。
ーーー都会から少し離れた所だとはいえこんな建物があったなんて知らなかった。
ボーっとしていると、いつのまにか隣に立っていた翔に腕を取られる。
「入るぞ。風邪なんかひかせられないからな」
「入るって、待って。ここ、どこです?」
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