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香織は、走り抜けていった黒塗りの高級車を睨みつけてた。
ーーーったく、車の人はさー濡れないんだから
、ゆっくり、そぉっといけばいいじゃん。
ムカついた気持ちを抑えながら香織は壁の方へ向いて手で泥水のかかった顔を拭った。
雨のせいで既に香織の化粧は、はげていたが、高級車が跳ねた泥水のせいで更にフェイスコンディションは悪化していた。
夏とはいえ、雨に濡れたままでいると徐々に寒くなってくる。香織は腕を手のひらでさすった。
がたがた小さく震え始めた香織。
ーーー寒くて、風邪引きそうよ。この雨、なんとかならないかな。せめて、もう少し小降りに。
「ん?」
黒いものが視界に入って来たので、香織は顔を上げた。すると、身なりのきちんとした初老の紳士が香織に傘をさしかけて立っていた。
「どうぞ。こちらへ」
初老の紳士は、そういうと掌全体でどこかを示した。
紳士が示した方へ香織は顔を向けてみる。
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