おいでおいでをされる

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服が乾くまで、これといってする事もないので大きな窓から外を眺めてみた。 車から見たときもものすごく乙女な感じの庭園だった。そう、アリスがウサギとおいかけっこしてそうな庭園だ。 こうして、上からみるとここが日本ではないような気さえしてくる。 ーーーまるで、お城から庭を眺めるプリンセス……。 ガラではないが、そんな気分にならざるを得なかった。 「服、乾いたかな?聞きにいってみようか」 香織は、廊下へ出ようとして重厚なドアを両手で開ける。 「どこへ行くんだ?」 立ちはだかるようにして腕ぐみをした翔がドアを開けてすぐのところに立っていた。 白のシャツにフォーマルな黒のパンツ。ボタンを全てしていないせいで、シャツが大きくはだけ、筋肉質そうな胸板が香織の目の前に現れていた。 思わず、ごくりとツバを飲み込む香織。 ーーー目に毒なくらいの見事な胸板じゃない。イケメン社長とはよく言ったものね。こうして 目の前で見ると…… や、やだっ 赤面するぐらい顔が顔が近いって! 見上げた香織の顔のすぐ上に翔の顔が迫っていた。 ドキドキを通り越して、もうどうにかなりそうだった。 心臓が嫌になるほどに大きく音を立てて動いている。 「どこへ行くつもりだ」 「ふ、服がいつ乾くかなって聞きに行こうと」 翔の両腕が伸びてきて香織の体を抱きしめる。香織の鼻が甘い香りに包まれてゆく。心も体もとろけてしまいそうだ。 「っていうか、なんで抱きしめるんですか!」 香織は、つい流されそうになる自分に喝を入れるために大きな声を出し、それと同時に翔の胸を押しやる。 「言っただろ。これは愛情表現の1つだ。拾ってきたからには、おまえのことは俺に責任がある」 「責任とかいいですから。こんな服も似合わないんで」 ひらひらするスカートを指差した。
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