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「あー、まあ。確かに」
「え?確かにってひどくないですか?『そんな事ない!似合ってる』とかって普通言いませんか?」
香織は頭にきて早口でまくし立てた。
ーーー自分で着させた服でしょうが。信じられない。
「普通じゃないからな。それに、それは俺が選んだ服じゃない。谷川の趣味だ」
少し笑う翔。
「谷川さんの?」
「ああ、それは……確かに微妙だな。ちょっと、ついて来い」
くすくす笑いながら翔に手を掴まれ部屋を出た。
長い廊下を歩きながら翔に握られている手を見つめた。
ーーーなんだか、妙な気分だけど……。
香織は小走りでふわふわスカートを揺らしながら翔の後について行った。
連れてこられた部屋は、全面鏡張りの壁で覆われた丸いドーム型の部屋だ。
翔は香織の手を引きながら、ドアの近くにあるボタンの1つを押した。
すると、部屋の中央部分が丸く開いた。
開いた場所に下から舞台装置のようにせりあがってくる色とりどりの洋服の群れ。全ての服がハンガーラックにかけられており、急に部屋が高級ブティックにでもなったみたいだった。
「うわっ、何」
「女物の服だ」
翔は、香織の手をとったまま服の周りを練り歩いた。いつの間にか入ってきていたメイドに
「あれ」
「これ」
と、目に付いた服を取らせて行く。
「じゃあ、順番に着てみろ」
そう言って翔は香織の手を、次のダンス相手に引き渡すようにメイドへ差し出した。
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