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窓に打ち付ける豪雨。
「傘は?」
健人が、香織の両腕を掴んだまま目の前にいる。
健人の後ろに見える窓の外には、猛烈な勢いで雨が降っていた。
「......ありません」
「だったら、もう少し……ここにいればいい」
そういう健人の薄茶色の瞳は何故か切なく光っていたし
はかなく消えてしまいそうに揺れてもいた。
「でも」
香織の腕に、しっかりと健人の指が絡みついていた。
「......行くなっ」
思いがけない言葉に香織は体を堅くして健人を見上げた。
「え?」
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