社長室の2人

17/17
前へ
/188ページ
次へ
窓に打ち付ける豪雨。 「傘は?」 健人が、香織の両腕を掴んだまま目の前にいる。 健人の後ろに見える窓の外には、猛烈な勢いで雨が降っていた。 「......ありません」 「だったら、もう少し……ここにいればいい」 そういう健人の薄茶色の瞳は何故か切なく光っていたし はかなく消えてしまいそうに揺れてもいた。 「でも」 香織の腕に、しっかりと健人の指が絡みついていた。 「......行くなっ」 思いがけない言葉に香織は体を堅くして健人を見上げた。 「え?」
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1204人が本棚に入れています
本棚に追加