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「お待たせ、大ちゃん」
真友子は、胸の内で膨らむ不安を押し隠し、精一杯の笑顔を作って彼の元に
歩み寄った。
しかし大祐は、眉根に小さく力を入れて、黙ったまま首を振る。
そして、次に彼が口にした言葉に、真友子は別の意味で慌てた。
「あのさ、本当は有名なローストビーフのお店に行きたいんだけど。
でも僕、このまま食べたら吐きそうだから、先にホテルにチェックインしてもいい?」
「えっ? 具合悪いの?」
だが大祐は、困ったような面持ちでまたしても首を振る。
だから真友子は、取り敢えず彼が望む通りにホテルへと向かうことにした。
そして案内された部屋は、カジュアルな感じのやや広いダブルルーム。
白を基調とした明るいデザインで、どちらかというと機能的な感じの部屋だ。
しかし、今は部屋を味わうよりも、大祐の体調が気になった。
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