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そして、次に我に返ったのは大祐が詫びを口にしてきた時。
「ごめん」という彼の声に、怒りは全く感じられなかった。
それどころか、その一言が、真友子の中に安堵と嬉しさを一気に溢れさせる。
そして同時に、堪えようもなく涙が彼女の目から溢れ出た。
そんな真友子の様子に慌てだした大祐を前に、いつもの彼女ならば、
大人の顔で涙を呑み込むくらい容易かっただろう。
しかしこの時は、溢れる感情と涙が遥かに理性を凌駕した。
そして蓋が開いてみれば、事の原因は、思いも寄らなかった大祐の嫉妬。
だが、なんとも大祐らしい今回の事の内訳に、今度は彼への愛しさが
真友子の胸に広がる。
そして彼女の差し出したバレンタイン・チョコを手に、嬉しそうに大祐に
抱きしめられた真友子の胸にも、甘い幸福が一気に広がった。
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