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長いようで短い時間じゃった。
その間あやつは何を思い、過ごしたのじゃろうか。」
風間は空を見上げ、流れる雲を見つめた。
「、、、血か。
、、、重たいのう」
言葉は見上げる空へ舞い上がり、そして雲と共に流れていく。
少年はそんな風間の想いを知ってか知らずか、最後の階段を軽やかに飛び上がり流れる雲を掴もうとする。
少年の名は、釈優刀(しゃくゆうと)。
10年前、当時7歳だった彼は、父親に手を引かれ雨の中鳳凰寺にやって来た。
父親の名は釈刀矢(しゃくとうや)。
当時35歳だった刀矢は、風間に「しばらくこの子を預かって欲しい」と頼んだ。
風間と刀矢は昔からの知り合いで、よく一緒に酒を呑み交わした。
この時の刀矢には生気が無く、よっぽどのことがあるのだろうと、風間は快く引き受けた。
それから10年間、一度も刀矢は寺に顔を出していない。
残されたのは優刀と、優刀の背負っていたリュックに入っていた一枚の手紙。
そして、刃のない、柄だけの刀が一つだった。
「右よーし、左よーし。
うん。今日も安全安全♪」
道路に出た優刀は、指差し確認を行うと風間に言った用事とやらに歩き向かった。
「ふんふんふん♪
お?丸また太ったか?」
丸と呼ばれたのは道路の隅で寝ている白い野良猫。
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