チョコの日なんて

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立春を過ぎてもなお、全身を縛り上げる寒気はいつも通り続いていた。しかしながら、ここ数週間にかけては、どこの雑貨屋もスーパーも、店頭のポップ書きは派手だった。通学時なんて、真っ赤なハートの装飾と顔面挨拶して、嫌でも今日が人生で一番辛い平日だということを認識させられた。 今年もまた入ってるのかな。いやぁ、困るなぁほんと毎年大量に机に突っ込まれてんだもん。 教室の前に立つと、いつもより一際賑わっているのがドア越しからでもよく分かる。ドアに手をかけ、そのまま深呼吸し、弾む心臓の拍動を落ち着かせる。 よし、行くぞ。 意を決して戸を勢いよく開け放つと、いつものクラスメイト達が黄色い声をあげた。 うるさいな、全く。 「今年もいっぱい貰ったんだね」 群衆の一人が僕の席までぴったり着いてきて、机の中のカラフルな包装紙を指さした。 「うん、ありがとう」 僕はそのズタズタに破れた大量のゴミを全て引っ張り出し、即座に床に叩きつけた。机の上の花瓶の水もぶっかけてやった。 一同豆鉄砲をくらったような顔になったのを確認したら、笑い声の波が押し寄せる前にサッサと教室を後にした。 この後早退するつもりだが、引越し前の最後の登校日、この日だけは爽快だった。
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