【怖い商店街の話】 煮込み屋

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すると、あの目印だった居酒屋の脇道から、ぼんやりと明かりが漏れているのが見えた。 脇道を覗くと、さっき通った時には暗かった店の明かりが煌々とつき、キッチンコンロに置かれた大きな鍋からは白い湯気が立ち上っていた。 その湯気が、俺たちの方に漂って来た。 口の奥から唾液が込み上げてくるほど、美味そうなにおいだった。 店の前に立つと、カウンターの向こうにグレーのフード付トレーナーにニット帽を深くかぶった背の低い年老いた店主の男が、「美味し~い煮込みはいかがかな~」とニッタリと笑いながら言った。 勝又は興奮気味に椅子に座った。 俺はラーメン屋の大将の言葉が気がかりだったが、仕方なく勝又の隣に座った。 店の壁には大きく「煮込み」と書かれているだけだった。 他にメニューがないのか尋ねると、男はしばらく沈黙した後でニッタリと笑い首を横に振った。 酒を尋ねると、男は鍋を混ぜる手を止めて何も書かれていない瓶を俺たちの前に出した。 ビールかと思いグラスに注いでみると、日本酒のようで透明だった。 「何という酒ですか?」 尋ねたが、男はニッタリと笑うだけで何も教えてくれなかった。
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