【怖い商店街の話】 煮込み屋

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【怖い商店街の話】 煮込み屋

同期の勝又は美味い物にやたら執着心があって、誰かにどこの何々が美味いと聞けば、例え海外だろうが足を運び、例え何時間だろうが行列に並ぶという変わった男だった。 ある日、勝又と取引先に行った帰り道、美味いと評判のそば屋に連れていかれた。 人気と昼時が相まって、店にはかなりの行列が出来ていた。 「早く会社に戻った方がいいんじゃないか?」 と心配した俺に、 「課長が、契約が無事に取れたからゆっくり昼飯食って来いってよ」 と勝又がいい、それを信じてそば屋に並んだ。 五十分ほど待って店に入り、注文してまた三十分ほど経ってそばが来た。 確かにそばは美味かった。 俺の人生の中のそばランキング三位以内に入るかもしれない。 だが勝又の表情は硬く、顔に『不満』という文字が浮き上がっていた。
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