目と鼻の先

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目と鼻の先

「涼太、俺先出るからな」 「うん。いってら」 自分の出勤時間より青の方が早いなんて、なんかまだ慣れねーな。 「・・・オイ。いってらっしゃいのキスは?」 「ハイハイ。ほんと飽きねーな毎日ちゅっちゅっちゅっちゅっ」 玄関で待つ青に軽く口付けると、満足そうな顔でドアを開け出ていく。 オレもそろそろ着替えよ。 会社が、マンションを出て徒歩5分ほどの場所にあるため、店舗で働いていた時に比べて通勤時間が大幅に短縮された。 青がオレの事を考えてここを借りたのだと分かって、なんだか幸せな気持ちになる。 オレが上海から帰ってきて、青の所に戻らないという事は考えなかったのだろうか・・・。 幸せな気持ちと同時に、うっすらとした恐怖を覚える。 恋は盲目、と言うが、まさに青にぴったりな言葉だと思う。その矛先が自分だという事にくすぐったいような、幸せのような、恐ろしいような・・・
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