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1 幼なじみはコスプレイヤー
「頼むよ!あおちゃんお願い!一生のお願い~~~~!」
うるさい居酒屋の店内。
そんな中でも、俺の目の前に座ってる男の声は一際大きく、店内に響き渡る。
チラリと隣の席に座っているカップルからの視線を受けて、恥ずかしい。けど、必死だからなのか…元凶の男は気付いていない。
「啓太、うっさい」
「だって、本気でピンチなんだよぉ、頼れるのはあおちゃんだけなんだってば~」
頭を下げて拝むように両手を合わせたまま、涙目で見上げてくる。
ダメだ、これはもう俺が首を縦に振らない限りは終わらない。相手に気を使うこと無く盛大にため息をつきながら、分かったよとだけ返事を返す。
そうすれば、今度は大きく万歳をされてしまった。どちらにせよ、こいつのリアクションの大きさは変わらなかったんだった。
数年ぶりに再会した幼なじみのテンションを身をもって感じて、思い出していく。
俺、小川葵には幼なじみがいる。
家が隣同士、同い年、同じ男。そこまで一致してれば自然と友達になり、いつでも一緒につるむようになるのに時間はかからなかった。
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