15 そして、イベントの日*

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 真顔で言われて、少しだけ照れる。そんな俺の反応に気を良くしたのか、ちゅっと軽く啓太の唇が俺のに触れてきた。深くなることも無く秒で離れると、少し顔を赤らめてヘラっと笑われる。その顔がなんだか可愛くて…流されるようにして俺も小さく笑い返しちまった。  ◆  着替えて啓太にメイクもしてもらい、準備が完了する頃には会場到着をしてから優に二時間は過ぎていた。  男子更衣室からミレイユ姿で出ると、周りに居た人たちからざわめきの声が上がって驚く。スタジオではみんな他の参加者に対して無関心だったようだけど、ここでは違うのか…?向けられる視線に戸惑っていると、先に出た啓太が自然な動作で俺の腰へ腕を回してきて引き寄せられた。 「ほら、ちゃんと俺に付いてきて?」  ウィッグとメイクのせいで、いつもよりも三割増しぐらいにイケメンになった顔、カラコンのせいか強い眼力…近寄ってきた啓太はとんでもなく破壊力が高い。惚れてるって言う弱みも上乗せした俺は、何度も頷いて答える他無かった。  クロークに荷物を預け、黄色っぽい照明のホールを抜けると自然光がまぶしいエリアへ出る。ちょうど入り口で窓越しに見えていた場所だ。  先に写メを撮ろう提案されて、断り理由も無いのでついて行くと、ちょうど明るい壁際に納まる。  家で撮影した時みたいにくっついてスマホの画面を覗き込み一枚。立て続けに何枚か撮り、俺のこめかみにキスをしているような画像が気に入ったのかそれをアプリで加工を始めた。     
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