4 試し着の夜

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 するっと腰まであがってきたそれの、横についていたフックを留める。それからファスナーを引き上げれば完了…あっという間に穿けたスカートは、とんでもなく心許ない。スースーしまくりな足を守るように、両手でさすった。 「み、短くないか…?」 「そう?原作通りだと思うけど…真っ直ぐ立ってみて?」  急に真面目になって立ち上がった啓太に姿勢を正せと言われ、ぎこちない動きで上体を起き上がらせる。気をつけをする俺の全身を数回見渡してから、啓太は腕の間に片手を差し込んできた。背中を摘ままれて、服が一段階絞まる。 「キツイ?」 「いや…」  啓太は、横にあるテーブルに乗ってるまち針を数本掴むと、口へと咥えた。それからまた服を摘まみ、固定するように針を留めていく。袖も折り曲げられ、ちょうど良い長さでまち針を刺された。 「ん~…腰は少し詰めすぎたかなぁ…」  脇腹辺りを指でなぞられて、ぴくりと体が揺れる。くすぐったいけど、ここは我慢だ…!そんな俺の様子に気付いてないようで、啓太は膝立ちに体勢を変えると、両手で腰をさすっていく。  腰骨辺りまで降りてきた手は、数回そこを撫でて位置を確かめると、今度はメジャーを手に取った。そのまま腰に抱きつくようにしてメジャーをまかれる。 「うん、大丈夫!これぐらいならすぐに手直し出来るよ」  メジャーをしまいながらこっちを見上げてくる啓太の笑顔にぎこちない返事を返すと、どうしたの?と顔を覗き込んできた。     
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