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途端に掛かるブレーキ。足を付けてチャリを止めた啓太が、こちらへ振り返ってきた。こっち見んなよ恥ずかしい…!意地でもきつく抱きついていたら、あおちゃんと珍しく小さな声で名前を呼ばれた。
「うぬぼれても、いいの?」
「…うっさい」
「あ~~~…やばい、すっごい可愛い…」
「うるさい…!」
「ねえ、あおちゃん」
「うるさいっての!」
「ねえ、顔上げて」
「もう、早く漕げ、」
いつまで経っても動かない啓太にしびれを切らして、顔を上げた瞬間言葉が途切れる。自分で言葉を切ったわけじゃ無い。物理的に唇を塞がれて、続けられなかった。
驚いて目を閉じるなんて事もできず、呆然と目の前の幼なじみを見つめる。触れる程度ですぐに離れた唇、それからうっすらと開かれた瞳と目が合う。じわっと熱を帯びているそれが細くなった。
「ごめん、キスしたい」
「…もう、してる」
「じゃあ、もっかい」
返事は返さず次は目を閉じる。そうすれば、柔らかい感触が唇に伝わってきた。普通は男同士でこんなことするなんておかしいのに…そうは思っても、食むように与えられるキスが心地よくて、止められなかった。
今夜啓太は真横の実家へ帰るとばかり思ってたけど、予想外にも、チャリを家の脇に片付けながら泊めて欲しいと言ってきた。
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