10 無自覚

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 手渡したスエットに頭を突っ込んでいる啓太へ、小声で礼を言う。  掛けていた眼鏡を斜めに曲げた状態で頭を出すと、微笑みだけを返された。本当に、俺の幼なじみはしばらく見ないうちにイケメンになったよ。  ◆  そして冒頭へ戻り、理由を得た俺たちは、3日に1回の頻度で啓太のマンションへ訪れて泊まり込むようになったわけだ。  ちなみに、今回作ってるのは主人公の剣の持ち手。レイピアみたく手を守るようなカバーがついていて、それを作るために使ってるのがライオンボードって言う白くてふにふにしてるやつ。何で出来てるかは知らないけど、温めると曲げやすくなるっていう性質があるらしい。それを利用して、ドライヤーで熱した所で曲げ、形付ける為に冷めるまで手を離せない。  そのせいで、熱いのを我慢して啓太はボードを掴んでいる。ちなみに、俺が持とうかと提案したけど、あおちゃんにそんなことさせられない!と秒で却下された。  衣装やウィッグとは違い、図工に近い武器作成は、俺にも手伝える事がたくさんあった。塗装はちょっと自信無いけど、線に沿って切ったり、言われた場所をボンドではっつけたり、持っててと言われて持ってることだってできる。     
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