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コスプレの世界においての男女比はまだまだ女子の方が多い。そのため、どこのスタジオでも男性更衣室は簡素な作りなんだそうだ。黒い小部屋なのにドアは無く、カーテンで廊下と区切られているそこが更衣室だと言われた時は結構驚いた。タックは事前に家を出る前に済ませ、後は着替えるぐらいにしておいて良かった。
テキパキと衣装に着替え、隣の化粧室に移動する。ちなみに、女子は更衣室で全て終えることが出来るらしい。男子は部屋が暗いからここで化粧なんて出来たもんじゃないと啓太がため息をついていた。
この前啓太のマンションでやったメイクをもう一度してもらって、ウィッグを被る。前髪の分けている方向を確認しようとスマホをつけて、スタジオに到着してすでに1時間半は経ってることにやっと気づいた。
入ってからこんなに経ってるけど、今日呼んでるっていうカメラマンは大丈夫なのか…?
「え?まーやんさん?大丈夫、2時間後に着てってお願いしてるよぉ」
サイドの髪を糊で貼り付けている啓太が鏡越しにこっちを見てきた。しっかし、イケメンが自分の顔に紙を貼り付ける時に使うあのオレンジのキャップの糊を塗りこんでるのは異様な光景だ。アイプチ用の糊よりも落としやすいんだって言われて、俺の頬にも塗りたくられたけど…未だに信じられない事が多い。
「2時間?!いや、まぁ、ちょうど良いんだろうけど…」
「普通は1時間後ぐらいなんだけどね、今日はあおちゃんのメイクも俺がしてるから。あ、それよりも名前考えた?」
「名前…?」
「うん、コスネーム」
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