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13 好きです*
トイレから戻ってきた二人は、何事も無かったかのように席へと座り直した。啓太も、少しだけぎこちないけどいつも通りに戻っている。
ここで、俺だけうろたえる訳にはいかない。隣へと座る啓太を出迎えて、ビールを呷る。意識しないようになるべく視線を逸らして、なんとかこの飲みは乗り越えた。
「それじゃあ、俺はこっちだから。今日は有り難う」
「はい!有り難う御座いました!」
「有り難う御座いました」
改札を入ってすぐ、まーやんさんから挨拶され啓太同様に頭を下げる。お疲れ様と手を上げてからエスカレーターへと乗り込めばすぐに姿は見えなくなった。
見送り、俺たちも帰る為に反対側のエスカレーターへと乗る。終電に近い時間だったせいで、ホームには誰も居ない。電車が来るまで、あと5分程度…夜風が冷たくて、待合室へと入った。
二人しか居ない室内…いつもなら、すぐに啓太がしゃべり出すけど、今日はずっと俯き黙ったままだった。
俺から話しかけるネタは豊富にある。コスプレなんて未知の体験をしたんだ、感想はいくらでも出てくるけど…どうしても、今日だけは切り出すことが出来なかった。
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