18 嫁の衣装を着てやりました!

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18 嫁の衣装を着てやりました!

   まさか、コスプレしたまま、会場のトイレで、立ちバックと駅弁をする日がくるとは思わなかった。  ふらふらになりながら身なりを整えて、トイレを出た俺は、啓太に支えながら更衣室一直線に歩いた。下を俯いて口元を抑えりゃ体調の悪い人に見えるだろう。長いピンクツインテールのせいで顔が隠れているからなおさらだ。  それでも撮影したいと声をかけてくる人には、啓太がやんわりとだが確実に断りを入れる。  行きと同じように、更衣室には俺たちしかいなかった。啓太に手伝ってもらいながら私服に着替え、会場を後にした。  やっぱり啓太に支えられながら駅の方面まで行くと、電車へは乗らず、タクシーへ放り込まれた。程よい揺れに目をつむれば、簡単に意識は飛んでいく。啓太のマンション前で起こされ、緩慢な動きでタクシーを降り、マンションの玄関ホールに入った瞬間だった。 「やばい…啓太、もう無理だわ…」 「あおちゃん?!だ、大丈夫?!」  いままで気力だけで持っていた体の力が一気に抜け、その場に崩れ落ちる。     
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