出発

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「おい! 今から食べちまってどうするんだよ!」  ノアの叫ぶ声が冷たい空気を震わせる。リリーは紙袋を開けるとランチ用に母が用意したホットドッグを取り出した。 「それは母さんが昼飯にと持たせてくれたんだ」 「大丈夫よ」  不敵に笑う血の繋がらない姉をノアは睨んだ。 「私たちの旅は始まったばかりだもの。二人で知恵を出せばなんとかなるわ」  リリーは家の方を振り返った。眩しそうに目を細め一瞬険しい表情になる。でもそれはすぐに緩まり、ノアに笑顔を見せた。 「頑張って、母さんのためにガラスの花とドラゴンの雫でできた薬を見つけましょう」  そう言うとリリーは大きな口でかぶりついた。  昼は自分の分を半分あげればいいか。ノアは呆れたように笑うと、リリーと同じように家の方を振り返り、硬く目を閉じてからリリーの横へと駆けよる。  ノアとリリーは朝日の差し込む市場を後にした。  二人の冒険はまだ始まったばかりだ。
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